■2004年10月21日発行号

▼70年安保の話(10月15日)

歌手の谷村新司さんがテレビで先日、70年安保の時の話をしていた。若い人達の中には、何故“70年安保”だったのかと思われる方もいるんだろうが、日米安保条約は60年に改正されてから、10年後の70年に見直しがされ、その後はいつでも1年前に通告すれば廃止できるというものだ。

その70年に大学紛争が重なり、日本だけでなく世界の工業先進国ではベトナム反戦とも結び付いて、若者の反体制運動が大きな盛り上がりを見せていた。そんな世相の中で、ベトナム反戦をベースにしたフォークソングの流行を素直に受け入れられなかった、という谷村氏の気分は、とても解る気がした。

60年安保の時の話として、安保条約そのものさえ、学生運動のリーダー達の多くは読んでいなかったという。現に、安保が終わり、ケネディ大統領が当時の学生運動のリーダーを招いて話を聞いてみたら、改正内容さえ知らずに運動していた事に驚愕したという。70年安保の時も、真の反体制的意識からではなく、時代の流れに取り敢えず乗り遅れまいと運動に参加していた学生も多かったのではないか。

谷村氏は、「自分がベトナム戦争に直接関わっていないのに…」との思いでいたという。もっと素直に自分の心の内を音楽にしよう、との決意がいくつもの名曲を創り出した訳だが、本物というのは、芸術であろうと人物であろうと、実はいつも反時代的・反動的なものだと私は思う。


▼三位一体改革(10月16日)

神とキリストと聖霊のことを指す三位一体という言葉は、明らかに宗教用語である。最初、この言葉を聞いた時、少しマズいのではないかと思った。先ず宗教界から抗議は来ないだろうか、との疑念が起こった。そして行政用語としても、宗教との関わりで問題はないのか等、少し心配を持っていたが、いつの間にか社会的に認知されてきたのは不思議な気がする。

“三位一体”と表現したのは当時、総務大臣だった片山虎之助 現・自民党幹事長だと思うが、今度は、参議院本会議での質問に立ち、「大乗的立場に立って」といった表現を使った。これは大乗仏教の“大乗”であり明らかに仏教用語だが、手八丁口八丁の片山さんらしい融通無礙な言葉の使い方だと思った。

能力とパワーには定評がある人だから、郵政民営化反対の狼煙とも受けとめられる本会議の質問は、小泉総理にとっては手痛い打撃だったのではないだろうか。今度の組閣は郵政民営化が最優先の課題だから、もし党内の抵抗などによって来年の通常国会で法案が提出できなかったり、廃案や継続といった事になれば、解散・総選挙といった政局に発展する可能性も出てくるかもしれない。


▼“笑いに賭けろ!”中邨秀雄著・日本経済新聞社発行を読んで
                         (10月19日)

著者は、吉本興業の前名誉会長で、吉本興業の隆盛に大きな貢献を果たした人だ。花菱アチャコの付き人となり、苦労を重ねた人物で慧眼である。島田紳助、横山やすし、西川きよし、笑福亭仁鶴、月亭可朝、桂三枝、タモリ、談志などのエピソードも楽しく読めたが、何より私が関心を寄せられたのは、著者の人生観である。中邨さんの人生哲学は共感できるものが多く、ここでは著書の中から一部をそのままご紹介させて頂き、参考に供したいと思う。

「何十年も芸人を見ている中で、人を押しのけて出てくるやつは大成しない。いいところまで行っても途中で消えてしまい、最後には外連味のない芸人に負ける」「『ちょっと見たことある』『あいつテレビに出ている奴と違うか』と言われる年収1,000万円をとるようになった芸人が危ない。マネージャーに新幹線を普通車からグリーン車にしろとか言い出す。芸人なら1回はかかるこれは“はしか”である。しかし、このハードルを越えて益々売れてくる奴は、しゃしゃり出るのをやめて控えめに、控えめに、を心掛けるようになるから不思議だ」「わずか1年で売れっ子になったタレントの寿命は1年しか持たない。明石屋さんまは売れるまでに10年以上掛かっているから、トップの座に10年以上座っていられるのだ。これは演芸界の鉄則である」


▼ロシアの行方(10月20日)

モスクワに長く暮らしていた人から話を聞いた。モスクワには寿司屋が200軒もあるなど、表向き自由主義経済体制に移行したように見えるが、一歩この首都から離れると、ソ連時代とさして変わらない社会環境だという。プーチンはエリツィンに担がれたが、エリツィンの故郷にもレストランがない程、自由主義経済の恩恵は行き届いていないようだ。

地方では、ブレジネフやアンドロポフの像が新たに建てられ始めていて、共産主義の事実上の復活も囁かれ、国民人気No.1はスターリン、No.2はプーチンで、国民の間には強権政治を待望する空気も生まれつつあるようだ。民族問題から発生している痛ましい大規模なテロ事件も、プーチンは独裁政治へ移行させる為に利用するかもしれない、との危惧が口にされた。そして、プーチンの本音は、かつての東ドイツ型社会を目指しているのではないか、とも。

人口減や経済の停滞で、とても世界戦略を考えられる程の余裕も今はないのだろうが、潜在的なロシアの拡張主義は変わらないだろうし、核兵器の存在を我々は忘れるべきではないだろう。ロシアが真に自由主義体制を築いていくには、まだまだ相当の時間の消費が必要だろう。アメリカが準備しているアジアでの米軍再編計画には、ロシアは全く考慮されていないのだろうか。


▼実感のない景気回復(10月21日)

党本部・副幹事長の初仕事として、企業まわりをさせてもらった。訪問先は上場企業で大企業ばかりだったが、訪問の目的は党の政策のアッピールと支援の要請だった。既に新聞報道もされていて、電話でのアポ取りの際、話の内容をご承知の企業もあったが、大方は「どのようなご用件で?」と聞かれた。

10社程、交渉したのだが、皆一様に厳しい経営状況を逆に訴えられたりした。設備投資など経営指標としては、若干、景気回復かと思われるマスコミ報道もあるが、今回の私の営業活動を通じての体感は、とても経済が現場で好転しているなどと言える環境ではない、ということだ。

私の地元・埼玉で零細・中小企業経営者の方々からの話を伺ってきて、景気回復などとてもとても、と思っていたが、大企業をまわっても同様だったことに改めて“景気回復”の危うさを感じた。もちろん、IT関連などで好調を維持しているところもあるのだろうが、産業界全体が底上げされなければ、本当の景気回復とは言えないのではないか。

私が歩いた企業は僅かではあったが、現場から、ものを率直に見ようとしない官僚や経済学者の言に、政治家は左右されてはならないと改めて考えさせられた。