山根隆治君
 おはようございます。
 まず、竹中大臣が少し遅れて来られるということでございます。

 スポット的に質問をさせていただきたいことがございます。
 谷垣大臣、先月の十五日に日中韓と東南アジア諸国連合の財務大臣の会合に臨まれて、日本とアジアが結んでいる租税条約の抜本的な改定というものを提案されたという新聞報道がございました。日本が想定していますのは、三月末に発効した新しい日米租税条約をひな形にした改定というふうに伝えられているわけでございますけれども、この提案についての背景、ねらいはどんなところにあったんでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 今委員がおっしゃいましたように、先日のASEANプラス3の財務大臣会合で、物、金、人の流れをやはり促進していく上で租税というものは非常に大事ではないか、その意味で長い間たっている租税条約というものを見直していく必要があるのではないかということを私は申し上げたわけであります。

 それで、その背景にありますのは、今委員が指摘されましたように、三十年ぶりに改定しました日米租税条約というものが念頭にございまして、それは源泉地国の課税というものを大幅に軽減することによって要するにお互い投資をやりやすくしようという思想がこの日米租税条約の中にあるわけでございますので、それをアジア各国との、必ずしもアジアだけにとどまるわけではありませんけれども、アジア各国の間に押し及ぼしていくということはお互いに意義があるのではないかというふうに考えて申し上げたわけでございます。

 さらに背景を申し上げますと、やはりアジア各国に日本がいろいろ投資をして、その投資がある意味で物作りや何かの形になりまして日本に輸出されてくるということもございます。そちらの方は、いわゆる自由貿易協定と申しますか、経済連携協定というようなものでそういうものを促進していこうという流れがあるわけでございますけれども、そういう物の流れの背景に投資というものがあるわけでございますから、そういうお互い投資をやりやすくしようということが日本の立場からしてもございますし、あるいはアジアの国の、お聞きになったそのアジアの閣僚たちの反応も、むしろ投資を呼び込むということがそれぞれこれから大事ではないかというようなお考えから、かなり、私の言わば提案と申しますか、そういったものに対しては前向きの反応があったのではないかというふうに思っております。

山根隆治君
 前向きな反応があったということで喜ばしいことでございます。これは各国共通にそのような前向きの反応があったというふうな理解でよろしいんですね。

国務大臣(谷垣禎一君)
 これは具体的には個別にそれぞれ議論をしてみなければ分からないわけでございますので、財務大臣会合の一般的な議論の中だけで必ずしも全部判断するわけにはまいらないと思います。

 ただ、私は事前に思っておりましたのは、例えば、日本が投資をしている企業等から上がる税収というものにかなり重きを、その国の租税収入で重きを置いている国がございますので、ひょっとするとそういう国は時期尚早というような、長期的に見れば租税条約が両国にとって利益があるとしても、時期尚早というような考え方も、反応もあるのではないかというふうに実は胸の中では思っていたわけでありますが、むしろ投資を呼び込むことというのに非常にやはり熱心な国々というものがございますので、個別にはもっと議論をしていかなければ分かりませんけれども、私のその会議における印象はかなり前向きな受け止め方があったというふうに思っております。

山根隆治君
 そうしますと、会議が終わった後で、実務者の中では事務レベルで更にもう具体的に話が詰まってきている状況だというふうな理解でいいんですか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 まだそこまでは行っておりませんで、いわゆる経済連携協定の交渉の中で、既にそういうことを交渉の中で提起している場合もございますし、まだそこまで行ってないところもございます。まだそのレベルで、具体的にまだ詰まってきているというわけではございません。

山根隆治君
 そうしますと、東南アジア諸国との租税条約の改定ということも今お話伺いましたけれども、ヨーロッパとの関係ですね、EU各国、オランダとの改定が一番早めに着手されているというふうに承知しているんですけれども、これらの手順について、あるいはヨーロッパとの関係についての状況はどのようなことになっておりましょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 これはアジアだけにとどまりませんで、ヨーロッパにもこういう考えの下で租税条約を改定していけたらと思っているわけでありますが、今御指摘のオランダとの問題でございますが、現行の日蘭租税条約というのは一九七〇年の締結でございまして、九二年に一部改正をして現在に至っているわけでありますが、もう既に三十年以上たっておりますので、相当この両国間の経済情勢の変化がこれはございます。

 そこで、両国間の担当者間でこれは非公式の折衝をやりまして、条約改正の必要性というようなものを非公式の折衝の中で必要だなというようなことになりまして、今年の六月七日から東京で改正のための正式交渉を行うことを両国政府間で合意したところでございます。

山根隆治君
 そうしますと、手順的にはまずオランダから話を詰めていって、そしてEUにも広げていって、更に東南アジアの国々との話になっていくと、こういうふうな順番ですか。

政府参考人(門司健次郎君)
 お答えいたします。
 租税条約の新規締結あるいは改正につきましては欧州あるいはアジアだけに限るものではございません。これにつきましては、経済関係を中心とする我が国との二国間の関係、あるいは相手国の税制、それから相手国の租税条約の締結状況、そういったものを勘案いたします。さらに、我が国と租税条約を締結している場合には、実際の課税上の問題が生じているか否かといったそういった実務的な観点も踏まえまして、総合的に勘案の上、交渉相手国を決めていきたいと考えております。

 これまで、三十年ぶりの改正、しかも新しい内容を含みます日米の租税条約の改正ということで力を注いでまいりましたけれども、今後、関係省庁とこの点について詰めていきたいと思っております。

山根隆治君
 それらの諸国との交渉をされていく上で、今のお話ですと、私が触れたところだけじゃなくて、世界各国との条約にも視野を広げているというのは外務省からの御答弁で分かりましたけれども、しかし、それぞれの各国でいろいろな商習慣も違いますし、経済環境も違う。そういう中で一様な条約というようなわけではないだろうというふうに思っています。

 我が国がやはり急ぐべきは、相手から求められている、強く求められている場合、あるいはこちらの方から少しは、今まで片務的過ぎたんではないかと、やはり双務的な、平等なというか、フィフティー・フィフティーという、そうしたものに改めなくてはいけないと、こういうものを私はまず優先していく必要があるんだろうと思います。この辺についての考え方を聞かせてください。

国務大臣(谷垣禎一君)
 日米租税条約、新しい新租税条約の基礎にある考え方は、一つは、先ほど申し上げましたように、投資所得に対する源泉地課税を低くして、お互いに投資をやりやすくしようということでありますけれども、もう一つは、そういうやり取りの中で、そういう特典を潜脱するようなことがあってはならないということでございますので、その特典条項というものをある程度きちっと整備していきませんと、何というんでしょうか、そこから変な特典を得るようなことが出てきて、ゆがんでいくということがあるかと思いますので、そちらの方にも目配りしながら、優先順位はどこかということを考えながらやる必要があると思っております。

山根隆治君
 そうすると、少なくともやっぱりオランダが六月七日からスタートということですから、オランダを手始めにするということは、これはもう間違いないということでよろしいですね。

国務大臣(谷垣禎一君)
 アジアとも既に始めており、ASEANとも始めているところがありますが、ヨーロッパではオランダがこの六月七日からということでございます。

山根隆治君
 分かりました。
 それでは、次に質問を移らせていただきたいと思います。

 今日お伺いをいたしたいというふうに思っておりますのは、一つはいわゆる格付機関、ムーディーズが世界で一番評価されている、あるいは大きい規模のところだと思いますが、そういった格付機関のまず評価と役割についてお尋ねをしておきたいというふうに思います。

 第一点といたしましては、格付機関の定義、これはどういったものであるのかというふうな認識でございましょうか。事務方でも結構です。

政府参考人(増井喜一郎君)
 お答え申し上げます。
 格付機関でございますけれども、私どもの、企業内容等の開示に関する内閣府令という府令がございます。そこで、言わばここには、格付機関という中に、格付実績、それから人的構成、組織、格付の方法及び資本の構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して格付機関を指定をするというようなことが書いてございます。そういったことを勘案して金融庁長官が指定をしているものでございます。

山根隆治君
 格付機関は、それぞれ株式会社で、自分のところで格付していくんだといえば、それはもうそれで自由に発足できるものであろうというふうに思うんですが、これは認可されるという種類のものと分けて考える必要があると思うんですけれども、今のお話のものについては、これは指定格付機関というふうに承知をいたしているわけでございますけれども、これは一本化されたものというふうな、今のお話ですとその辺が少しあいまいもことしておりますが、これはいかがでしょうか。

政府参考人(増井喜一郎君)
 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、今私が申し上げたのはいわゆる指定格付機関の規定でございます。

山根隆治君
 それでは、指定格付機関、今御答弁ございましたけれども、政府が指定格付機関にしたところの機関というのは、日本では二社、そして外国を入れると全部で五社になるというふうに承知をいたしているわけでございますけれども、この格付機関の意義、評価、どのようにされておられましょうか。

政府参考人(増井喜一郎君)
 お答え申し上げます。
 先ほども申し上げましたように、指定格付機関につきましては、内閣府令におきまして金融庁長官の指定による指定格付機関制度というのが設けられておりまして、この格付は有価証券届出書を提出することなく、機動的な有価証券の発行を可能とする発行登録制度というのがございます。これを利用するための要件とするなどの一定の目的のために金融行政上利用をしているところでございます。

 いずれにいたしましても、この指定に当たりましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、格付実績、人的構成、組織、格付の方法、資本構成その他発行者からの中立性に関する事項等を勘案して有効期間を定めて指定をするというふうにされておりまして、そういう観点から、特定の営利企業が大株主になっていないこと等を勘案して、利用できる格付機関を指定しているところでございます。

山根隆治君
 評価はどうなのかということをちょっとお尋ねしたんですが。

政府参考人(増井喜一郎君)
 先ほど申し上げましたように、この指定格付機関、今申し上げましたのは発行登録制度といった制度などに利用しておりまして、そういう意味では、幅広く市場から受け入れられている格付を利用するような、いろんな行政目的に利用されているということで、そういう意味で一定の意味がある、意義があるというふうに思っております。

山根隆治君
 はい、分かりました。
 大臣、竹中大臣来られましたので、大臣の方に少し向けてお尋ねをしておきたいと思います。

 今お尋ねしているのは格付機関の評価と役割ということで、大きなタイトルではお伺いしているわけでございます。

 二〇〇二年の四月に、黒田財務官が、ムーディーズとそれからS&P、フィッチへの意見書というものを送っております。日本の国債への評価というものが非常に低い、低くしたということについて公平を欠くんじゃないかということでの意見書を送ったということでございますが、大ざっぱにどんなふうな内容のものであったか、簡単に御説明願います。

国務大臣(谷垣禎一君)
 これは私からお答えをした方がいいと思うんですが、一部民間格付会社が日本国債に対して低い格付を行っているということで、当時、黒田財務官でいらしたわけですが、内容を簡単に申しますと、我が国は、これは大幅な貯蓄超過である、それから世界最高水準の対外純資産も持っているし外貨準備も保有していると。それから、千四百兆を超える個人金融資産を保有するといったファンダメンタルズは非常に強いものがあるというのが一点ですね。それからもう一つは、歳出改革といった構造改革への強力な取組を行っているという点がもう一点でございます。こういうことを中心といたしまして説明をしてきたと。

 それからさらには、こういったファンダメンタルズ等を適切に反映していないその一部の格付につきましては、その判断根拠について、各社の判断根拠について説明を求めるというような行動を取ってきたわけでございます。

山根隆治君
 ホームページの中で、これは財務省のホームページでしょうか、大臣政務官、砂田さんと吉田さんのホームページ、登場しているホームページがございますが、ここで質問に答える形で、「国債の格付けに関する意見書について」ということで、かなり実は詳細なものがホームページ上は載せられております。

 興味深く読ませていただきましたけれども、一国の政府が民間のそうした外国の機関に対して意見を述べるということは非常に常識的には尋常じゃないようにも思えるわけでございますけれども、これらの批判というか、そういうものも受けながらの、あえて質問書を提出したと、意見書を提出したということで、回答書も来ましたけれども、それにも満足できるものではないということで更に質問書を送られたと、意見書を送られたというふうに承知いたしているわけでございますけれども、私自身も自国を愛するというふうな立場からするとその気持ちは十分によく理解はできますけれども、外国から見て、一民間団体、企業に対してそうした政府として意見書を出したということについてはいろいろなリアクション等はあったんでしょうか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 確かに、今、山根委員がおっしゃったような民間企業を一国が相手にするのはどういうものかという御議論があったこと、当時は私は財務省におりませんでしたけれども、そういう御議論はあったことは承知しております。こういう格付会社が国債市場における国債の評価というものにどういう影響を与えているかという判断もなかなか難しいところがあるんではないかと思います。

 それは、景気、物価の動向であるとか、国債の需給、あるいは財政金融政策等の総合的なことで国債の価格は決まると思いますが、やはり有力なこういう格付会社の評価というものが一定の影響を与えるということは、これは否定できない面もございますので、我々としては、当時は私はおりませんでしたけれども、当時の当局の、何というんでしょうか、内心をそんたくいたしますと、自分たちが見ているものと余りにも懸け離れている評価に対してはやはりきちっと意見を表明しておこうということではなかったのかと思います。

 それで、我々はやはり、もちろんそういうこともして、納得のいかない評価に対してはそれなりの行動を取っていかなきゃならないと思いますが、あくまでやはり我々が本来やるべきことは国債管理政策をきちっとやっていくということではないかと思っておりますので、そちらの方ももちろん懸命にやらせていただきたいと思っております。

山根隆治君
 意見書を出したことが誤りだということは申し上げるつもりは特にございませんけれども、慎重を要しただろうということを私は言いたかったわけで、気分としては私自身もなぜなんだということを言いたい気分でございますから、大臣の感覚と近いものが私自身にもあるだろうというふうに思っております。

 当時の報道したものを読んでみますと、福田官房長官は、ムーディーズの評価に対して、木を見て森を見ずという感じがするというふうな発言をされています。それから、当時の武藤財務省の事務次官も、今回の決定は誠に遺憾であって、日本経済のファンダメンタルズは課題はあるけれども基本的には強固なんだと、こういうふうなことを発言をされているわけでございます。

 もう一つ、私、注目をいたしましたのは、このムーディーズが格下げを発表した直後に、我が国に二つある格付機関、指定機関の中の一つですけれども、日本格付研究所が逆に非常に高い評価を発表しまして、日本国債トリプルAというふうに評価をしたということでございます。今となって考えてみると、過去この時点でのこうした措置、措置というか、評価というのは非常に、二つの評価がかなり懸け離れたものであったわけでございますが、今となれば、どちらが正しかったというふうに御認識されていますか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 私も先ほど、当時の黒田財務官が出した意見書と申しますか、申入れの基本的な方向は、私、現在見ましてもまあそうではないかというふうに考えておりますので、余り本当は、山根委員がおっしゃいましたように、個々の企業がやる評価を一々、おれはそんな成績、もっといい成績取れるはずだと言うのもいいのかどうか分かりませんが、私は基本的に一部の格付機関が余りにもやや低い評価をしたということはあったのではないかと思っております。

山根隆治君
 結果的にこの格付機関の影響力の大きさというものを日本政府自身も認めたということになる一つの騒動だったろうなというふうに思っているところでございます。

 今年の実は三月に、モルガン・スタンレー証券が二〇〇三年の円債市場に最も貢献した格付機関を選定する格付機関オブ・ザ・イヤーを実施をして、そこで金賞に日本格付研究所が選ばれたということが実はございまして、世界には今どのぐらい格付会社が、各国に指定されたものがあるのか。数字はつまびらかでありませんけれども、二十あるいはそれを超えるものがあろうかと思いますけれども、その中で、一つの円債市場ということではございますけれども、このように評価されたということについての感想をちょっと聞かせてください。

国務大臣(竹中平蔵君)
 まず、私、こちらに来るのが遅れまして大変申し訳ございませんでした。
 格付の話でございますが、格付というのは、私たちは基本的にはこれは市場の声であるというふうに認識をしております。しかし、市場の声で、大恐慌以来、例えばムーディーズの話が出ておりますけれども、そうした中で、ただし、その時々で振り返ると正しい声を上げてきたではないかという市場の評価があるから、その声が一般にマーケットの中で重視されているということだと思います。

 しかし、この市場の声、同時に、例えばアジア通貨危機のとき等々、本当に正しい格付をしていただろうかということに対して疑問を上げる、声を上げる専門家もいらっしゃって、その意味では格付機関自身が競争しているという状況であろうかと思います。

 我々政府は、市場の声に対して、それに対して市場の声が間違っているとか、そういうことを言う立場には当然のことながらない。ただし、今回、先ほどから財務大臣が御答弁しておられるケースというのは、これは日本国債の格付でありますので、実は我々が当事者になります。我々もマーケットの中で声を上げなければいけない立場にある。

 これは、A株式会社の格下げがなされたときは、A株式会社の社長さんは、いや、そういうことではないんだということを一生懸命PRする。これがいわゆるIR活動でありますから、黒田財務官の活動もその意味では日本国政府という当事者としてのIR活動であるというふうに当時私たちは認識をしておりました。

 結果的には、委員に対するお答えとしては、これは市場の中で引き続き競争する中で、格付機関自身がどのように評価を得ていくかという競争が今この瞬間も行われているんだということになろうかと思っております。

 我々としては、その意味では市場の声が多様に、その多様な声が競われることによって正しい認識が市場に広がっていくと。これは今後とも是非続けていただきたいことであると思っております。

山根隆治君
 我が国の国債の評価ということでございますから、先ほどのJCRが金賞に輝いたということも理解しやすいわけでございますけれども、海外でのいろいろな活動に対する評価ということについては、なかなかまだ日本の格付会社も後塵を拝しているというふうな感じを私自身は受けるわけでございますけれども、日本のこの二つの格付会社に対する評価、期待というものについてどのようにお考えになるか、お聞かせください。

国務大臣(竹中平蔵君)
 日本の格付会社、日本にも格付会社を作ろうではないかという議論がなされたのは、やや不正確でありますけれども、二十五年強ぐらい前のことだったのではないかと思っております。そのとき、私自身、そうした議論に若干参加をさせていただいた経緯がございますが、当時、ムーディーズとかS&Pとかが確立されている中で、日本で格付会社なんか作っても駄目ではないか、相手にされないんじゃないかという議論が結構ございました。

 しかし、日本に関する格付、アジア地域に関する格付等々でやはりそれなりの比較優位を発揮することも可能なのではないかということで、これはもう業界の方々もいろいろ知恵を出してそのような、その制度ができたというふうに思っております。

 これは、ある意味で後発であった日本の格付機関が今マーケットの中でその意味では健闘していただいていて、さっきのモルガンのような評価もいただいたということであろうかと思います。市場が非常にダイナミックに進化をしていまして、正しいマーケットの声をみんな聞きたがっているという状況にあろうかと思いますので、これはそれぞれの立場で是非競って、その上で強くなっていっていただきたいと思っております。

山根隆治君
 先ほど局長の答弁で、企業内容等の開示に関する内閣府令に触れた答弁だったかと思います。その中で、指定格付機関というのは、金融庁長官がその格付実績、人的構成、組織、格付の方法及び資本構成、そのほか発行者からの中立性に関する事項等を勘案していくんだと、こういうことでお話がございましたけれども、現在日本には二社ということでございますけれども、指定格付機関について、これをもっと増やしていきたいというふうなお考えがあるのか、それとも、今の二つのものに大いに期待していくということなのか、あるいはまた、逆にそういうふうな申請、指定格付機関としての申請というものが出されているのかどうかということについてお伺いをしてみたいと思います。

政府参考人(増井喜一郎君)
 お答え申し上げます。
 今先生の御指摘の指定格付機関でございますけれども、もちろん、これは申請に基づいて指定をするということになっております。したがいまして、申請が新たに出てくれば、基準に基づいて指定するかどうかを私どもが検討するということだと思いますが、今のところ余りそういった動きがないと聞いております。

 いずれにいたしましても、幅広く市場に受け入れられている機関、格付機関というものがいろいろ出てきて、それがお互いに切磋琢磨をするということは非常にいいことではないかというふうに思っておりまして、もし、そういった動きがあり、かつその基準が満たされていれば私どもも指定をするという方向で考えたいと思っております。

山根隆治君
 世界的なレベルでの話ですが、これは私はまだ二十社ぐらいではないかということを触れましたけれども、実際に掌握されておられますか、格付会社。各国が指定したり公認したりしているところの格付機関はどれぐらいだと承知されていますか。

政府参考人(増井喜一郎君)
 恐縮でございます。今手元にそういった資料を持ち合わせておりません。

山根隆治君
 是非これは掌握をしていただきまして、格付機関、日本も権威あるものに是非高めていただきたいというふうにも思います。

 アメリカからスタートしたこの格付機関、もう百年をたっておりますけれども、私どもも我が国ではまだ二十数年の歴史だというふうに承知いたしております。また、スタッフの数等も、例えば、これは少し統計がちょっと古いです、一九九八年のものを私も持っておりますけれども、例えばムーディーズの場合には社員数が千五百名ということでございまして、対象会社数が五千社というような非常に大きなものでございますけれども、日本の二つの格付機関は、これは百六十名あるいは八十名というふうなスタッフ数でございますし、会社数、対象会社数もそれの十分の一ぐらいと、ムーディーズのですね、いうふうな状況でございますから、なかなかまだまだ追い付いていないというふうな気がいたします。

 様々なノウハウを持っている古いところに伍していくのには相当の努力を重ねなくてはならないというふうに考えておりますけれども、こうしたアメリカのムーディーズとかS&P等との比較の中で今一番欠けているものはどのようなものがポイントとしてあるのか、教えてください。

政府参考人(増井喜一郎君)
 お答え申し上げます。
 先ほど先生からも御指摘ございましたように、ムーディーズあるいはスタンダード・アンド・プアーズとかいう大きな格付会社は相当の従業員もおりまして、幅広く各国で格付の事業を展開をしているということだと思います。それに比べますと、若干我が国の格付機関、数はそこまでではないということで、その幅の広さ、あるいは各国の市場も含めて市場から幅広く受け入れられるということについては、やはり先ほども申し上げたような欧米の格付機関よりは少し規模も小さくて、若干後れを取っているかなという感じはいたしております。

 いずれにいたしましても、詳細な状況というのは、私、今手元に持っておりませんが、全体の、何ていいますか、感じとしてはそういうことではないかというふうに思っております。

山根隆治君
 今、全体の感じというよりは形式的な規模だとか形としてのお話でございましたけれども、その内容において一番指摘されているのは、経営の独立性ということが指摘されているんだと思うんです。その違いというものが非常に大きいんだと。

 だから、例えば日本の格付機関の場合ですと、ある一つのところは生命保険会社の大手の人たちが中心となってやっている。したがって、そういうところでやっているので、国債も、たくさん日本の国債買って持っているわけだから、それへの評価というのはどうしても甘くなるんだというふうな批判、嫌みが外国から言われたりしているわけです。

 実際、そんなことはないだろうという部分もあろうかと思いますけれども、そうした脆弱性というか、ポイントとしてはあるんだろうと私は思っているんですけれども、その内容の違いというものについてどのように認識されているかというのを改めてお尋ねをいたします。今、私の意見ですけれども。

国務大臣(竹中平蔵君)
 日本で、私、二十五年ほど前と言いましたが、二十年ぐらい前だったかもしれません。そういう格付機関を日本でも持とうではないかというときに、いろんな御意見があったというふうに記憶をしております。

 まず、これ、格付の会社というのは金融庁のいわゆる監督権限下にあるものではございませんので、極めて一般的な見方ということになりますけれども、そのときに、やはり今おっしゃった独立性というのは大変重要な課題になったと思っております。結果的には幾つかの金融関係の会社、何とか証券会社と何とか銀行系、また別の系統、いろんな議論の中で、それぞれ今二つの会社が設立されてきているわけでありますけれども、独立性をやはり確保して、市場の声として客観性を持っているということはやっぱり重要なことであろうと思います。

 私の認識でありますけれども、二十年を経て、その意味でのやはり独立性というのは、二十年前にいろいろ議論されたときに比べて相当違ってきているのではないかと思います。であるからこそ、先ほど御指摘いただいたようなやはり評価も得ることになってきた。

 現実問題としてこれは何の許認可も要るわけではありませんから、格付を行っている独立の会社は実際にはたくさんございます。この特定の分野で非常に高い評価を得ている独立系の会社もあるというふうに承知をしております、固有名詞は挙げませんですけれども。

 しかし、独立系でなかなか規模が大きくならない。規模が大きくならないと市場の声としてはなかなか届きにくいという点もあります。ここは正に自然発生的にこの格付機関というものが生まれてきて世界の中に定着してきたという歴史を考えますと、まず、やはり今の日本の二社にはしっかりと更に独立性を高めるように頑張っていただきたい。それに、既にある独立系の、しかし規模が余り大きくないところには更に実績を積んで、やはり市場の中での信認を確立していっていただきたい。これはやはり自然の発生で、自然に競争力を付けていただくということを期待するのが当面の方策かなと思っております。

山根隆治君
 もう少しで参議院選挙も始まるんですけれども、マスコミが告示前に世論調査をして、そして告示後も調査をして、投票日の数日前に、最終の一週間前に発表したりする。それで、非常に我々も一喜一憂するわけですけれども、実はその世論の調査機関ももうたくさんあって、有名な電通とか博報堂だとかいうようなところもあれば、本当に数十人でやっているところもある。ところが、大きければ大きいほど、では当たるのかということになると、確率はまた全然、私の経験でも実は違っているわけでございまして、大新聞が、大きな新聞社等の総動員して非常に費用を掛けたものが必ずしも当たるということになっていないというところが非常に面白いところでございまして、私自身が承知している調査機関というのは非常によく実は当たるんですね。勝ったときも負けたときもクールに、一般の新聞等の報道と全く違った結果が出ていても、今まででもう三度ほどぴったり当たっているんで、非常にもう怖いものだなと思いました。

 私も、この調査機関、アメリカでもムーディーズ、S&P、これはもう最高の機関だというふうに言われていますけれども、新興のそうした格付機関が非常に実績を今出して注目されているというところがあるというふうに聞いております。債務不履行の確率というものをどう出していくかということでも非常に実績があって、今注目されている格付会社があるというふうに聞いております。

 私は、独立性ということでは非常に問題が指摘されている日本のこの格付の機関ではありますけれども、逆にそれを、その特徴というものを生かしてやっていくということで、是非、世界にも評価されるものになってもらいたいというふうに思っているところでございますけれども、これから、もしかしたら、格付会社、指定を国から受けたいという申請が出てくるかも分かりませんけれども、様々なところでいろいろな情報を収集して、こちらからも、国としても発信する中で、様々な可能性を民間に求めていってもらったらいいだろうという気が非常にしてなりません。

 主要国の指定、公認、特にアメリカ、日本、イギリス、フランスの指定、公認を受けて、取っているところというのは、それはもうアメリカしかないということが実態でございます。日本の格付会社二社につきましても、日本とイギリスあるいはフランスの指定、公認は受けておりますけれども、アメリカからはまだ受けていないということ等も実はございます。これはもう非常な、いろいろな見方がございますから、そう単純に、だからどうということにはなりませんけれども、やはり世界的に権威あるものに高めていくのには、日本なりの新しい分野の開拓というか、視点というものをやはり持っていけば私は市場に受け入れられるだろうというふうにも思いますが、これらの点についての考え方、見解、そして育成の必要性、手法ということについてお考えをお聞かせください。

国務大臣(竹中平蔵君)
 繰り返し申し上げますが、この分野というのは我々の監督権限にはないものではございますけれども、市場のインフラという意味でやはり大変重要な問題であるというふうに考えまして、私たちも大変高い関心を持って見ております。

 先ほどから御議論いただいておりますように、発行登録制度を利用するための要件とする、そういう観点からの指定格付機関の制度を我々はその意味で持っている、市場の声を活用させていただくという趣旨で持っているわけでございます。その市場の声として、引き続きしっかりとした競争を通していい機関に出てきていただきたいと思いますし、その実態を見ながら、申請等々あれば、当然のことながら我々としては、その指定格付機関にふさわしいものがあれば、当然そのような形でその市場の声を活用させていただくというのが我々の基本的なスタンスであろうというふうに思っております。

 その上で、それぞれの機関がどのように今後発展していくかということについては、これは政府として何か特別の施策で育成ということでは必ずしもないと思いますが、我々としてはその競争条件はしっかりと整備させていただいて、それで良いところに関しては、良いボイスを上げるところに関しては、申請があれば指定格付機関として指定もしてエンカレッジする等々、そういった精神でマーケットを見ていきたいと思っております。

山根隆治君
 これは谷垣大臣にお伺い是非しておきたいと思うんですけれども。
 日本の格付機関が地方自治体の格付を実はしたことがある。これは、地方自治体というのは都道府県ですけれども、都道府県は一定の規模がございますので、格付されたからといってそれほど大きな、決定的な影響は持つに至っていないということが一つ言えると思います。しかし、自治体、今、三千どれぐらいあるんでしょうか、今合併していますからあれですけれども、三千ほどの自治体がこれから、今までは地方債を発行するのにもこれはもう国の事実上保証があったということでございますけれども、これからは協議制になってくる。二〇〇六年からだったと思いますけれども協議制になる。どういうことかというと、地方議会がこの起債を認めた場合に発行をするというふうなことになりますね。

 そうすると、その起債されたものを受け入れるところが、今までどこでも、銀行でもどこでも受け入れてもらったものが、非常な、その自治体をじっくり見ていくというところが出てくるだろうというふうに思うんですね。そうしたことが地方自治体に与える影響というのは非常に大きなものがある。もしかしたらデフォするんじゃないかとかといろんな不安もあるでしょうし、政府の保証を、今まで担保としてあったものが、これが外されてくるということになった場合に、元気なところがそうした対象になっていくんだと思うんですけれども、地方自治体に与える影響、起債の起こしようについて、大臣としてどのようにお考えになりますか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 これはむしろ総務大臣に御答弁をいただくべきことかと思いますが、今も竹中大臣のお話にもありましたように、何かそういう、今までと制度を改めていくと、じゃ、どう評価するのかという問題が必ず起こってまいりますので、市場にとっては格付機関というのはインフラ的な役割を果たしておりますので、そういう中で切磋琢磨していい評価をしていただくということを我々も期待したいと思っておりますし、それから、恐らくそういう制度の移行に伴いまして、どう見ていくかということは、政府の側としてもよく注意をして、眼をかっと開いておかなければいけないのではないかと思っております。

山根隆治君
 はい、分かりました。是非、非常に大きな影響のあることでございますので、財務省の立場から地方自治体を見ていっていただきたいというふうに、これ御要望しておきたいと思います。

 それから、これから景気回復の見通しの問題について主に竹中大臣にお伺いするんですが、その前に、これも竹中大臣しかお答えできないことなんですが、新聞報道によりますと、竹中大臣が非常にラブコールを受けていて、参議院選挙、自民党から比例選挙へ出るんじゃないかということで、本人は非常にお断りの意思がある、強いというふうには聞いているんですが、しかし、これはもう本当に、選挙に出る出ない、あるいはやめる出るというのは、もう直前までこれ分からないんですね、私の経験からすると。これで、今はやらないと言っても急にやるとかというと非常に私たちも脅威ですし、行政執行上のいろんな前提を持ちながら質問しなくちゃいけないということもあって、その御決意というと変ですけれども、今のお気持ちをちょっとお聞かせください。

国務大臣(竹中平蔵君)
 ラブコールがあったというあれでございますけれども、辞めろコールはたくさんございましたが、そういう少なくとも要請というのはございませんし、私自身そういうことは考えておりません。

山根隆治君
 強い要請が、例えば、人様のところでございますが、青木幹事長等から強い強い要請があったり、あるいは今、谷垣大臣も今目くばせされていたように思いますけれども、あった場合にまだ考慮するということはあり得るんですか。絶対出ないんですか。

国務大臣(竹中平蔵君)
 銀行に関する御質問に対する答えと同じになりますが、仮定の質問に対する答えというのは差し控えさせていただくべきだと存じます。

山根隆治君
 これはかなり出る意思があるなというふうに、私はそういうふうに受け取らせていただきました。今の御答弁からすると、非常に脅威を感じながら、景気回復の問題について質問をさせていただきたいと思います。

 今、景気がいろいろな経済指標を見ると非常に好転してきているというふうに見ることも私はできようかと思います。この景気の回復が本当に確かなものなのかどうか。

 一九九〇年代、失われた十年ということを九〇年から言われてきておりまして、しかし、回復の局面というのも過去に二度ぐらいありました。平成五年から九年のとき、それから十一年から十二年のとき、二回ございましたけれども、皆とんざしてしまった。一回目のときには医療保険料の引上げということがありましたし、それから社会保険料も引き上げて、これで消費税も上がったというか、上げたということで失敗したということが一つの歴史の教訓としてあろうかと思います。それから、二回目の回復局面のときもアメリカの景気の減速で駄目になったということが指摘されているわけでございますけれども、今回の景気の回復というものは本物だというふうな御認識でしょうか。

国務大臣(竹中平蔵君)
 ちょっとその前に、しつこくて申し訳ありませんが、誤解を招くと本当にいけませんので、要請はありませんし、私にそのつもりはないということは申し上げておきたいと思います。

 景気の回復は本物かという御質問でございますけれども、御指摘のように、バブル崩壊後、今回の景気回復局面以前に二回の局面がございました。その二回と比較するということは重要な意味を持っていると思うんですが、幾つもの点でもちろん違いますけれども、大きくやはり二つの点で違っていると考えております。

 一つは、金融が、経済を支える金融が過去二回に比べてはっきりと良くなっているということであろうかと思います。不良債権問題、ずっと日本経済悩まされてきたわけでありますけれども、それに対して、しっかりと情報を把握して自己資本を充実してガバナンスを強めると。これは一つ一つの努力の積み重ねだと思いますが、そのような状況になってきて、今、日本の不良債権問題が、もちろん問題はまだ残っておりますけれども、しっかりと解決の方向に向かっているという方向が見えてきたと。これは、やはり経済の基盤を支える金融が強くなったという点は大きなところだと思っております。

 具体的な例で申し上げますと、だからこそ銀行の株の相対株価が上がっている。平均株価に対する銀行の株価の相対株価が、かつては上昇が見られなかったわけですけれども、今回は明らかに上昇している、その点が挙げられると存じます。

 二番目が、需要項目を見ますと、経済を引っ張っているのは公需、公的な需要ではなく、明らかに民需になっている。公需はむしろマイナスであります。民需の中で、もちろん外需もありますけれども、外需が今三割ぐらいで、内需が七割ぐらい、そのような割合だと思っておりますけれども、やはり民需の中でも内需が主導してきた。そういう意味で、経済の発展のパターンがやはりじわじわと変わってきているという点が一番大きな点だと思います。

 もちろん不確定要因は多々ございます。今で言いますと原油の問題もありましょうし、世界的な資産市場、これは為替レートを含む問題もございましょう、地政学的なリスクもございます。そうした点は、まだリスク要因はありますけれども、従来とは違う点は明らかにある、それをしっかりと伸ばしていけるかどうかが今問われているということだと思っております。

山根隆治君
 五月二十八日に、いわゆる骨太方針でしょうか、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四年、これ原案ということでございますが、まとめられました。

 この前に、五月の十九日に素案が作られているんですけれども、素案から原案に至る過程で幾つかのところで、幾つかというか、かなり記載されていなかったものが新たに書き加えられたというところがございます。私も、その象徴的なところが一番最初の「はじめに」というところですが、ここにいろいろな思いというか、竹中大臣の思い等が凝縮されてこれ書かれるところだと思うんですね。

 それで、そこの中で一番中核を成しているというのが現状認識の中で景気の現状、状況について述べられたところで、素案の中になかったものがあえて書き加えられたところがございました。事前にこれお話ししていないのでお手元にないかと思いますけれども、民需、民間需要主導の「成長が実現している。」という表現だったものですが、これが二週間、九日ですね、しかたっていないのに「成長が実現しつつある。」ということで、これは変わっているんですね。そして、その後に二行ほど新しく書き加えられて、全く新しく書き加えられているんですが、しかしながら、地域の回復動向にばらつきがあり、大企業に比べ中小企業の状況は厳しいことを認識することが重要であるということを改めて書かれているわけですね。ということは、当初の非常な勢いと違って、やはりちょっと不安だなというものが、ここに自信のなさが出ているのかなというふうに思えてなりません。

 OECDであるとか国際機関の日本の経済に対する評価というのは、ニューヨーク・タイムズもそうですけれども、必ずしも一様ではなくって、これは一時的なものでまた後戻りするんだとか、いや、結構これは今までのものと違ってこの景気回復の兆候というのは本物なんだという評価が国際的にもされている。そういう中で、このわずか九日間の間に一番の大きなポイントのところについて少し変化があるというのはどのように考えたらいいんでしょう。

国務大臣(竹中平蔵君)
 御指摘のところ、私自身よく覚えておりますけれども、「実現している。」ではなくて「実現しつつある。」の方が良いのではないかというふうに言って書き直しを命じたのは私自身でございます。

 これ、骨太の方針では、いろんな先生方の御意見も伺いながら直していく、修正して良いものにしていくわけでありますけれども、私自身、これをまとめるときの立場というのは、これは先生方と御意見は少し違うかもしれませんが、改革はやはり間違いなく成果を上げていると思っております。しかし同時に、これを取りまとめる立場として是非強調したいのは、決して今では満足していないんだと、今こそが大事なんだと。もうすべてうまくいっているというふうなトーンで受け取られますとむしろ改革は進まなくなるわけで、改革は進みつつあるけれども、まだまだやらなければいけないことがあると。

 だから、これ、各省庁はこれは傾向として今の政策を余り変えたがらない、それを何とかもっと良い方向に持っていこうというふうにするのが経済財政諮問会議、内閣府の常に立場でございますけれども、そういう立場を我々としては是非明確にしながら、その意味では、現状を評価しながら、同時に健全な危機意識と前向きの改革姿勢を示す、そういう骨太方針に仕上げていこうではないかと、そのような意識で書いているわけでございます。
 地域につきましても、だからこそ地域再生をしっかりやらなければいけないんだと。そのための方策につきまして、これは後半で我々なりに各方面と調整をさせていただいて、資金の問題、必要な地域再生の資金についてもいろいろこれから工夫をしていくんだということを書かせていただいたつもりでございますし、評価しながら更に前向きのと。

 そのような骨太、まだこれは途上でございます。まだ決定されたものではございません。この瞬間もいろいろ調整をしておりますが、その方向で是非取りまとめたいと考えております。

山根隆治君
 ちょっと質問、今の御答弁から幾つかちょっと伺いたいことが出てきたんですが、ちょっと時間も迫ってきていますので、是非聞いておかなくちゃいけないことだけちょっと、スポットだけまた伺います。

 この骨太の方針の中で年金の一元化という言葉が削除されたということが、今日も新聞、大きく報道もされているところでございますけれども、実はこの年金の一元化ということについては、これはもう三党合意の中に具体的に明記されているんです。

 これは谷垣大臣に伺った方がいいかと思うんですけれども、一自民党の有力者という、実力者というお立場の中でも、政府の一員ということでそういうことも聞いてみたいと思うんですけれども、この骨太の方針から外されたということは、同じ与党の中でのことでございますから、これは事実上、三党合意というものを政府・与党、自民党の方、自民党、公明党、与党の方がこれはないがしろにした、ほごにしたというふうに思えてならないんですけれども、この点についての御認識、聞かせていただけますか。

国務大臣(谷垣禎一君)
 これ、骨太方針は竹中大臣の責任で、責任というと、経済財政諮問会議、みんなで議論するわけですが、お取りまとめいただいておりますので、今時点のその部分の調整がどうなっているのか分かりませんが、まだ調整の過程だと思います。

 ただ、三党合意というものがあるのはこれは事実でございまして、これは、三党合意というものを結んだからには、与野党ともにそれは遵守していかなければならないものと思っております。

山根隆治君
 ところが、三党合意ができて、私も党の幹部でもありませんから、一議員というふうな立場でいつもこの間の経緯等を見てきましたけれども、三党合意がなされた後で、厚生労働大臣が年金の一元化なんていうのは現実には無理なんだよというふうな発言をテレビ等でされているのを見ました。そしてまた、今日の新聞報道で、年金の一元化というものを骨太から外すということについては、これは与党の方がこの三党合意については積極的ではない、あるいはほごにしているというふうに私自身には見えるということを強くこの際一言申し上げておきたいというふうに思っております。
 反論があれば、じゃ、お聞かせ下さい。なければいいですけれども。

国務大臣(谷垣禎一君)
 年金の一元化で私がここで御答弁申し上げるのがいいかどうか分かりませんが、これはいろいろな、三党合意ができましてからもいろいろこの年金の一元化については御発言があることは委員のおっしゃるとおりだと思いますが、ただ、この一元化に向けて長い歴史の背景があるわけでございますから、制度には歴史があるわけでございますから、その制度の、何というんでしょうか、今までの過去をどうしていくかという議論を抜きに白紙で絵を描けばこれは極めて簡単だと思いますが、過去の歴史の重みをどうこなしていくかということについては、それぞれ立場の違い、認識の違いがあるのではないかと思います。

山根隆治君
 それでは結構ですが、私の見解を述べさせていただいたということでとどめたいと思います。
 さて、竹中大臣にこれはお話を戻した方がいいでしょうか。

 「マクロ経済からみた構造改革の進展」というのを五月に内閣府の方でこれは出されました。これも大ざっぱに読ませていただきましたけれども、非常に楽観的あるいは自画自賛というふうに私には読めます。特に、冒頭のところで、「景気回復と構造改革の役割」という中では、財政出動に安易に頼ることなく、日本経済は民需を中心に着実に回復、企業部門の改善に広がり、金融システムの強化、不良債権の終結が見込まれる、二〇〇四年度末には、雇用情勢は厳しさが残るものの持ち直し、持ち直しているけれどもまだ不安定要因がある、こういうことじゃなくて、先に出てくるのは、厳しさが残るものの持ち直しているということで、かなりのこれは自信に満ちたものだというふうに読ませていただきました。

 しかし、民間の様々な調査機関が見た景気の回復ということについては、今年度は確かに、経済成長率ということで見ると、二〇〇四年度では実質には平均的に、十九社、民間調査機関が調査して発表したものをまとめると大体三・二%の成長だということで見ていることは間違いありませんけれども、しかし、来年度についてはその半分ほどの数値になるだろうと、こういう非常にある意味では厳しい見方も民間の調査機関はしているというふうに私は思っておりますけれども、このギャップについて竹中大臣はどのようにお考えになりますか。

国務大臣(竹中平蔵君)
 経済に対する見方は常にギャップがございます。これは先ほどの市場の声と同じでありまして、各予測機関、ある意味でどのように予測ができるかということを競っているということにもなります。

 十六年度から十七年度にかけましては、その意味では多くの機関が循環的には十六年度の方がいいだろう、十七年度は循環的には少し調整の影響も出てくるかもしれないという見方をしているというのは事実であろうかと思います。そこのところはそこのところとして、我々も循環的なものは見ていくつもりでございます。

 同時に、経済全体というのは常に一〇〇%だれもが満足するようには、これは残念だけれども、なかなかならないもので、先ほど申し上げましたような常にリスクファクターというのを抱えながらやっていっている。私は、しかし、循環的なものはある意味でこれはなかなか消せないものでございます。ジュグラーという有名な方が、不況の最大の要因は好況である、好況の最大の要因は不況である、だからこれはもう循環は避けられないんだという趣旨のことを言っているわけでありますが。

 我々は、やはりその点でもう少し、もう一つ注目しなければいけないのが私たちの潜在的な成長力がどのぐらい今あるのかと。潜在的な成長力を阻害するような要因、これがいわゆる負の遺産の部分、不良債権に象徴される負の遺産であります。それがどの程度取り除かれているのか、そこをやはりしっかりと判断しなければいけないと思っております。不良債権に象徴されるような潜在力の発揮を妨げるものについては、これはやはり一〇〇%片付いてはいないけれども、かなり良い方向に向かっているという点に関しては我々はそういう認識を持っております。

 一方で、世界がすさまじい競争に向かい、IT革命が進み、その中でより前向きの潜在成長力を更に高めていくための改革というのは、これはまだまだ進めていかなければいけない。

 日本の経済が置かれている状況は正にそういう状況であろうというふうに認識をしております。

山根隆治君
 突然ですけれども、宮澤元総理大臣とは御親交もあったかと思うんですけれども、人物評価、どのようにされていますか。

国務大臣(竹中平蔵君)
 これは谷垣大臣にお伺いされる方がより詳しいかと存じますが、やはり戦後日本を代表される政治家でいらっしゃって、特に経済面で非常に深い知識と経験をお持ちで、日本の経済政策の具体策について、それぞれその時々で非常に大きな貢献をなさってきた方でいらっしゃると思っております。

国務大臣(谷垣禎一君)
 今、竹中大臣は財政や経済政策の面でおっしゃいましたけれども、要するに、戦後の占領期からどう日本が独立をしていくかというような過程につきましても、今生き証人の数少ないお一人ではないかと思っておりまして、そういう意味では戦後日本の政治、経済全体の設計に大きなかかわりを持ってこられた先達だというふうに私は思っております。

山根隆治君
 私も同様な認識です。その宮澤元首相が、今の政府は頼りたくても頼れないんだということをおっしゃっておりまして、「実際、政府は何もしていません。政策は当てになりません。十年やってこの結果なんだから、異存はないでしょう。」という非常に手厳しい発言もなさっていらっしゃいます。「何もしない方が、余計なことをするよりもまし」だというところまで言われていて、本当にこれ、だれのおっしゃったことなのかともう一回読み返しましたけれども、これは宮澤元総理が言われておられることなんですけれども、感想を聞かせてください。

国務大臣(竹中平蔵君)
 機会がありましたら是非直接お目に掛かって御指導を賜りたいと思いますが、御紹介の記事、もちろん全部読んでおりませんけれども、察するに、政府が財政を通して積極的に需要管理というような形での介入はしていないと。財政赤字がこれだけ大きく、国債が累増している中で、そういう意味で政府に何かしてくれというのを、もうこれ以上頼れる状況ではない、そういう中で、正に自助自立の精神の下で経済は運営されていかなければいけない、そのようなお話であろうかというふうに思っております。

国務大臣(谷垣禎一君)
 私も一度宮澤先生とよくその辺のお話をさせていただきたいと思っておりますが、ここに椎名先生がいらっしゃいますけれども、宮澤先生は、同時に、椎名先生のお父上がよく言っておられたということでおっしゃることがございます。それは、一利を興すは一害を除くにしかずということを椎名先生のお父上がよくおっしゃっていたそうでございまして、宮澤先生からよく聞いておりました。そんなことも併せて考えたいと思っております。

山根隆治君
 ちょっと話がとんだ方向へ行っちゃったんでございますけれども、私が申し上げたいのは、そうした皆さんが尊敬してやまない宮澤先生も、非常に日本の経済を憂慮されると同時に、政府の経済政策、このままでいいんだろうかという疑問を呈しておられるということだけは是非重く受け止めていただくべきではないかということを一つ申し上げておきたいというふうに思っております。

 先ほど竹中大臣が、景気の回復についてはということで、遠慮がちながら、しかし心の奥からこの景気回復の局面は構造改革によるものだというふうなことを言わんばかりの御答弁がございましたけれども、具体的には構造改革によってどの分野でどのように景気回復に寄与されたということを御説明いただけるでしょうか。

国務大臣(竹中平蔵君)
 構造改革は幅広いものでございますし、いろんなものがその中に含まれていますから、また多くのことの積み重ねでございますから、この結果これが良くなったというふうな説明をするのはなかなか難しい面がございます。その上で、幾つか考えていることを申し述べさせていただきたいと思いますが。

 日本の経済が非常に厳しい状況にあった一九九七年、九八年のころ使われていた一つの言葉がコンフィデンスクライシスという言葉だと思います。コンフィデンス、信認の危機。通貨というのはその信用を基にして成り立っている。価値があると思うから価値があるわけであります。その信認が揺らいでいるんだと。そうした問題が、その背景には当然銀行の不良債権の問題というのが非常に大きく存在していた。まだ全貌が分からなくて、一体この国はどれだけの不良債権を持っているんだという不安の中に、これは一般市民まで含めて置かれていた。そういう問題に関して、不良債権が、まあこれは検査等々を通じて正しく把握されるようになってきているだろうと。それをルールに基づいて今オフバランス化して、その意味でのコンフィデンスというのが非常にやはり回復してきたということは、これは私はやはり大きなポイントであろうかと思います。

 消費を行うにしても投資を行うにしても、これは金利がどうだ、税率がどうかということの以前にコンフィデンスの問題があります。構造改革、とりわけ金融の再生を通してそのような基盤ができたというのは、先ほどの御説明ともかぶりますが、やはり大きなポイントであろうかと思います。

 二番目は、やはり企業の部門が強くなってきているということだと思います。企業が歴史的に見ても高い収益を持てるようになった。もちろん、その過程でいろんなリストラ等々が行われたわけでありますけれども、これは単にコストを削ったというだけではなくて、損益分岐点をきちっと下げて、財務リストラを伴って、それによって競争力そのものを高めてきたと。選択と集中の中で、この間もまた税制も手伝ってRアンドDがしっかりと行われてきて、競争力が強まってきているということであろうかと思います。

 日本の今の研究開発の税制に関しては、これは先行減税の中で行ったものでありますが、これは実はかなりしっかりと評価されている税制であろうかと思います。そして、何より企業の選択と集中を助ける制度としての様々な企業制度の改革がこの間に行われて、それが民間の努力と相まって企業部門を強くしたということだと思います。

 気が付いてみると、小さなことの積み重ねではありますけれども、連結納税という制度ができたではないか。そうすると、持ち株会社制度の下で正に選択と集中を行えるような体制がその間できたではないか。再生のメカニズムについても幾つかの新しい法律が強化されたではないか。産業再生機構もできたではないか。

 結果的に、象徴的に申し上げますと、やはり今、MアンドAが非常に増えている。MアンドAは日本の風土になじまないと言った方もおられましたが、この五年間で日本のMアンドAは二・五倍になっております。実は、このMアンドAを助けるための税制、商法関連の制度の整備というのが行われた。事後的に見ますと、MアンドAを行った企業の利益率は、そうではない企業よりもはるかに高い。そういう個々の積み重ね、企業の法制の整備、それを利用した企業の努力、そういうところが今のキャッシュフローの増加、それが財務のリストラも伴いながら設備投資の増加になってGDPを押し上げている。私はそのように認識をしております。

 多々ございますが、象徴的なものとして金融の問題と企業の体制の強化の問題が挙げられると思っております。

山根隆治君
 経済環境の整備をされてきたと、税制の面、金融の面、そういうことでのお話だったかと思います。

 しかし、構造改革そのものによって直接的な、この産業が元気になったとかということの因果関係というのはどうしても、今の説明にもございませんけれども、見ることができない。本当に、経済環境を整えることに努力されてきたことは間違った方向では決してなかったというふうに私思いますけれども、それが即、今の景気の回復につながっているとはとても私自身には思えません。

 例えば、今、日本の景気を引き上げている、牽引車の役割を果たしているのはデジタル家電だというふうに言われているわけでございますけれども、この業界、産業界についてもそうした、今お話のあったようなところ、直接的な因果関係というのは見ることもできません。やっていることは間違いだとは思わないけれども、それが今の回復につながっているとはとても思えません。設備投資が今盛んであること、それからアメリカ、中国への市場とのかかわりの中で景気の回復の局面というのは今も維持し続けているわけでございますが、非常に不安定な要素がたくさんあるということを是非御認識をいただきたいというふうに思っております。

 時間でございますので、何か一言あれば御答弁いただいて、あと一分でございますので。

国務大臣(竹中平蔵君)
 日本の経済は、五百兆に及ぶGDPを持つ経済でございます。例えば、デジタル家電は大変好調でありますが、それだけでこの五百兆経済を三%成長させることは、これはできない話だと思っております。現実には、鉄、造船、そういう、一般には語られないけれども、今非常に高い収益を上げているところがある。その背景に、私が申し上げたような問題があるというふうに認識をしております。

 ついでに申し上げれば、デジタル家電そのものも、実は技術開発も一つございますし、同時に、これまでのITに係る取組、日本は今IP電話で、ないしは携帯を通じたインターネットで、世界である意味で最大、世界で最もブロードバンドが多いアメリカに今迫ろうとしております。そういうこともやはりIT戦略本部等々の積み重ねであると思っておりますし、なかなか因果関係、これをやったからこれだということではないというふうに私も思いますが、やはり広範な改革の努力が芽を開きつつあるという点は、これは何とぞ御認識を賜りたいと思うところでございます。