山根隆治君
 本日は、大変お忙しいところ、ありがとうございました。
 時間もございませんので、端的に御質問をさせていただきます。

 まず、森本先生にお尋ねをいたしたいと思います。イラク問題についてでございます。
 自衛隊がああした形で派遣をされていて、当初かなり世論でもイラクの派遣、自衛隊派遣については批判的な御意見は多かったんですが、時とともに自衛隊大丈夫だろうかという、論理を超えた、理屈を超えた国民の感情というものが今出てきていて、世論調査をすると、自衛隊の派遣についてそれをよしとする、数字的には、ものは多くなってきている。これは当然な、ある意味では当然なことでございますし、私たち民主党という立場からしても、派遣はおかしいと言いながらも、やはり自衛隊員の身の安全というものについて非常に心配をしているということでは国民感情と一致しているところであります。

 さて、イラクがああいうふうな状態になっている中で、連日、テロのニュースというのが私たちの茶の間に飛び込んできて、非常に心配いたしております。特に、先般のスペインにおける爆破、列車の爆破事件ということについては、これイラク国内にとどまらないで、イラクに派遣された国々にもその危害が及ぶという心配を国民も持っているかと思います。

 それでは、このテロを本当に抑えていくのには米軍のああした攻撃、そして駐留ということだけをもってしてそれを抑えることは到底でき得ないと思うわけでありますけれども、私はその根本にあるやはり貧困の問題の解決などがこれはもう不可欠であろうというふうに考えますが、自衛隊も派遣された今となって、本当にテロに対する、テロの根絶についてはどのような手法を持って行い得るのかについて先生の御見解を聞かせていただきたいと思います。

公述人(森本敏君)
 現在アメリカがイラクの中で行っている作戦というのは二つの系統、二種類から成っていて、一つは御案内のとおり、ジョイント・タスクフォース・セブンという米中央軍隷下にある実力部隊であり、ざっと見てアメリカ軍が十二万、イギリス軍が一万三千人でできている、イラク全土にわたる治安を維持、回復をしてテロと戦うというこれは実力部隊であります。もう一つが、御案内のとおり、CPAという暫定連合統治機構という、これは司令部機能でありますが、千数百人から成る司令部機構で、実際にはこれは統治、民生、石油管理並びに人道復興支援、これに三十八か国ぐらいの国が約兵力六万人を送ってイラクの人道復興支援及び石油の管理、民生の安定その他をやっていると。

 この後者の方については、六月の末にイラクに統治権を移譲するという計画になっているわけです。

 前者の方については、テロを依然として抑圧し、抑制し、イラクの治安を回復するという活動をやっているのですが、実体がよく分からないのですが、イラクの中でテロをやっている主体は、国外から入ってきたアルカイーダのメンバーや旧バース党の党員、旧軍人、旧スンニ派の勢力、あるいはフセインの残党、これのシンパなどなどで、アメリカ軍が見るところ、ざっと二千万の人口のうち五、六千人という先鋭分子だと思います。国外から入る者を最近は国境を非常に警備を厳しくして閉じ込めているので、これ以上人数が増えないとすればテロリストたちは一定の領域の中に閉じ込められているということでありますが、しかし、自己主張をするためにはこのテロの活動がますます先鋭化し、ますます過激なものになるという現象は、全体の件数は減っているものの依然として根絶できないという状況になるのではないかと思います。

 したがって、アメリカの行う一連のこのテロの抑圧作戦がまだ相当長く続くと思いますが、これがどのような成果をもたらすのかということと、CPAが中心になっている人道復興支援によって民生の安定と復興人道支援がどんどんと成果を広めていくということとは、正に車の両輪のごとく作用してイラクの治安が維持、回復されていくというふうに考え、それが進む限り、自衛隊の置かれている客観的な環境状態は悪くなることはないと、徐々に改善、ゆっくりであるが改善されるというふうに私は理解しております。

山根隆治君
 今回のイラクへの攻撃ということで、イギリスはいち早くアメリカを支持し、日本も追従していったという形があります。ヨーロッパの中で、フランスはまず反対しておいて、そこからいろいろな条件を付けてアメリカと交渉する。非常にイギリスとフランスというのは違った外交手法を持っているというふうに私には見えます。

 イギリスについては、まず賛成しておいて、その中でいろいろな条件というものを、自分たちの思いというものをアメリカに伝えて、そしていさめるところはいさめると、こういう手法のように思えます。

 そこで、日本の場合にはそうした国家戦略というか、そうしたものがどうも希薄なような気がして、私はもう思えないわけでございまして、ずるずると戦略もなくアメリカに引きずられていく、唯々諾々としてアメリカを受け入れていくということがどうも頼りなげな外交のように思えてならないんですけれども、その点について、先生、日本の外交というものについて、アメリカとのかかわり方について、日本政府の取っている選択というものについて御見解があればお聞かせをいただきたいと思います。

公述人(森本敏君)
 このアメリカの始めたイラク戦争にアメリカの同盟国がどのような対応をしていったのかということは、日本の外交を考える際、非常に参考にはもちろんなりますけれども、私は先生の御指摘と少し違う印象を持っていて、去る三月の二十日、昨年の三月の二十日、イラク戦争を始めた同日、総理はこれを支持するという非常に強い外交上のメッセージを出しておられて、その態度は極めて鮮明に初めからアメリカを支持するという態度に終始変わりはないということなのではないかと思います。

 ただし、具体的にどのような協力をするかということについては、私の個人の推測するところ、三月の二十日の段階ではまだ自衛隊を送ってこの一連の作戦に貢献しようというところまでは十分には考えておられなかったのではないかと思います。三月の二十日から始まったイラク戦争は、四月の九日、おおむね三週間でバグダッドが陥落し、その後、正に戦後の復興という段階に入り、五月の初め、エビアンのサミットがあった日米首脳会談から、五月の二十三日、クロフォードの日米首脳会談のこの三週間の間に、総理がどこかの段階で、自衛隊を送ってもこれに必要な貢献をするという決断が行われたのではないかと思います。

 そういう意味で、クロフォードの首脳会談から帰られた後、実際に法案の整備が指示され、準備が行われているところを見ると、どこかの段階で、五月のどこかの段階で政府は現在の人道復興支援にこのような形で実質的な貢献をするという決断が行われたのではないかと思います。

 ただ、そのことに戦略がなかったというふうに私は思いません。当初は外交上の問題として、日本はアメリカのこのイラク戦争を強く支持すると言って支持表明を明確にし、その後、具体的な政策を幾つかのオプションの中で選択をし、自衛隊を送るというための法案を整備するという決断を行われた。この一連の過程に私は明らかに一つの明確な意思決定が行われていたのではないかと考えますので、戦略はなかったと思いません。

 ただ、その後の経緯を考えると、もう少し、イラクの中にある七十一の油田を現在アメリカが占有してしまっているのですが、日本が石油の幾つかをよこせなどと言う必要はもっともありませんが、しかしイラクの中にある石油の精製のプロジェクト、あるいはナフサで石油化学製品を作る企業の活動その他、イラクの石油にかかわる下流部分のプロジェクトに日本が提案をしコミットし、日本の経済的な利益を享受するというんでしょうか、そういう方法を日米交渉を通じてやるという余地は依然として残されているのではないかと思います。それは、余りにアメリカに独占される必要はないと思います。

 アメリカは明らかに五〇年代、イギリスが中東湾岸から引いた後、フランスとロシアが中東湾岸地域に入ってきた、この影響力をすべて排除をして、アメリカが長期にわたる中東湾岸地域における影響力を行使しようとして一連のイラク戦争を始めたと私は考えておりますので、それに同盟国として必要な協力をする限り日本としてアメリカに要求すべきものは堂々と要求してもよい、その点についての政策はもう少し明確であってもよいのではないかと、かように考えています。
 以上でございます。

山根隆治君
 それでは次に、北朝鮮の問題についてお尋ねをさせていただきたいと思います。
 少し前にさかのぼって考えてみますと、北朝鮮と韓国との関係、金大中大統領は太陽政策を取られた、融和策を取られた。結果として、私は、余りそれはいい状況を今日もたらさなかったというふうに思っております。一方、我が国も北朝鮮の拉致の問題を始めとする一連の措置で非常に弱腰であったということが、今、内外からも強く批判もされているし、その結果も明らかになる。今の小泉内閣においては修正をしてきてはいるところでございますけれども、この太陽政策と日本の今日まで取ってきた北朝鮮への外交政策というものについては私は失敗だったというふうに思うわけでございますが、この点について、北朝鮮との今後のかかわり方、交渉の仕方も含めまして、アドバイスいただければ有り難いと思います。

公述人(森本敏君)
 韓国が、前政権から現在の政権に至る一連の政権下で太陽政策及びそれに準ずる政策を取り続けていることは御案内のとおりで、その点については御指摘のとおりだと思いますけれども、日本は日米韓国という三か国の連携を維持しながら、実態はアメリカの、言葉は非常に良くないのですが、アメリカのおしりをひっぱたいてずっと来て、北朝鮮については、現在の六か国のメンバーの中では北朝鮮に対して最も厳しい立場をずっと維持し続けてきたのではないかと思います。

 それは二つの理由があって、一つは、核開発問題というのは、ほかならぬ日本にとって他の国よりもはるかに重大で深刻な国家の安全保障上の影響を与えるということなので、何としてもこの問題を解決したいと考えていること。拉致問題というのは、結局は北朝鮮がこの問題に真剣に対応するという姿勢を見せない限りこの問題は前に進まないと考えていることから、日本は北朝鮮に従来余り、弱腰であったり妥協をしたということは、私は余りそういう印象は持っていないわけです。

 ただ、一般にそう見えるときにどういう問題が起きているかというと、北朝鮮の中にはやはり政策に手法を論ずる考え方があって、物事を余り単純化すると危険なのですが、どちらかというと、他国と交渉をし、その交渉を通じてエネルギーや食料を取り付け、体制が生き残ろうとするいわゆる国際派と称する人々と、一切の妥協をせずに、他に依存することなく北朝鮮は自らの政策を続ける必要があり、他の国と外交交渉によって必要なものを手に入れたりする必要がないと考えている手法を取る考え方とが北朝鮮の指導部の中にやはりあるのではないかと考えます。

 その意味において、日本はできるだけ他の国、周辺国との関係を重視しながら北朝鮮を国際社会の中に招き入れて、この国の体質、体制を変えていくということに従来から努力してきたわけで、その意味において、日本の対北朝鮮政策そのものは割合強い姿勢でずっとあり続けたのではないかと私は思います。

 この姿勢は途中で変えるべきではなく、北朝鮮が一番嫌がっている、この一連の問題をやがていずれの日にか国連安保理に出して、国際社会を巻き込んで、きちっとした制裁なり国際社会の圧力を掛けるというための外交努力を続けるというそのプロセスの中で、日本は日朝の二国間問題や六か国協議に前向きに対応するよう北朝鮮に働き掛けるという必要が常にあるのではないかと、かように考えています。
 以上でございます。

山根隆治君
 次に、台湾の問題についてお尋ねをいたします。
 選挙が行われて、最高指導者がだれになるかということによっても随分変わってくるかと思いますけれども、今年はオリンピックがあります。そして、二〇〇五年からは、様々な軍事専門家の分析等では、中国が相当軍備増強してくると、また、そうした経済的な力を持ち得る分岐点になるのではないかというふうに言われているところでありますけれども、もし台湾有事の際、日本の取るべき安全保障上の措置というものについて先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

公述人(森本敏君)
 台湾の今回の総統選挙及び国民投票がどのような結果になるのかということはなかなか予断を許さないところでありますが、御質問の向きは、正に台湾有事の際、日本が取るべき対応と措置という御質問でございますので、このことに限定して言えば、中国は、御指摘のように、現在は国内の経済発展と安定を二つの重要課題としながら、新しい指導部が中国の発展のために邁進しており、当面、二〇〇八年のオリンピック、二〇一〇年の上海万博を成功させるために、国際社会の中で信用を失墜するようなことを起こしたくない。それから、米中関係を万全の状態にして右肩上がりで経済成長を続け、そのためにはアメリカとの緊密な協力が必要であるということで、必要以上にアメリカとの関係に配慮して中国は国家を運営しているのではないかと考えます。

 しかし、御指摘のように、二〇一〇年以降に一連の問題が解決、過ぎるまでの間に台湾との軍事バランスを有利に展開させようと考えており、人民解放軍に、中国解放軍、人民解放軍の近代化に邁進していると、させているということも事実のように思います。

 これら一連のことを考えると、二〇一〇年ごろまでに台湾海峡が緊張するという可能性は比較的低く、仮に緊張しても、アメリカとの関係を決定的なものにしないよう中国新指導部が配慮するという条件下で中台関係の緊張が続くということであれば、我々は日米関係を万全の状態にしておくことによってこの問題を乗り切れると思いますが、そこから先はバランスが変わって、中国の方が有利な軍事バランスになったときに、やはり台湾の人々がどのような方向を自分たちで選択するかということによって中台関係が変わり、かつ、二〇〇八年以降の米国の新しい政権、次の次の政権が対中政策をどのように考えるかということにこの問題は深くかかわる問題だと思います。

 我が国としては、台湾が国境を接しているということを十分に念頭に置きながら、台湾の軍事力というのは台湾の真ん中を走っている山脈の南部にありますので、この南部を中国軍が侵攻するときは沖縄の領域の中に入ってくるということが当然考えられますので、同時に台湾が不必要に日本の中に、例えば回避したり逃げ込んできたりするということを防ぐように台湾にどのように働き掛け、そしてどのようなことが起きようとも日米同盟をきちっとしたものにしてこの問題に対応できるという体制を常に維持していなければいけないということなのではないかと、このように考えております。

山根隆治君
 久保田先生にお伺いをいたします。
 先ほどのお話の中で、統一的構造対策という表現がなされたかと思いますけれども、これは一体どのようなものなのか、もう少し御説明いただければ有り難いと思います。

公述人(久保田泰雄君)
 まず、先ほども申しましたけれども、やはり雇用対策というのが緊急性も含めてパッチワーク型で様々に出てきたのではないか。それから、各省庁のメニューもそういう部分も多分にあるのではないか。それは、現場レベルから見ますと、そのことが本当に整合性を持って、しかも現場の知恵を入れながら使い勝手のいいものになっているか、あるいはそういうことはどうなのかと、こういう視点が一つは問題意識としてあります。

 それからもう一つは、やっぱり、この雇用の問題は、日本はやっぱり世界の中でも優等生と言われてきて、石油ショックや、二次の石油ショックでも二%台だったかと思います。それが、やっぱり九〇年代に入ってバブルの崩壊の後、二%から三%、四、五と、こういうことでウナギ登りになっているという。私も労働組合で交流する機会があるんですが、ドイツのIGメタルなんというのは随分前は話が違っていたんですが、ここ数年前のところは、日本の連合と会っても、にやりと笑って、ドイツに似てきたななんということで。

 そういう意味では、やはり基本的に右肩上がりで、そして非常に完全雇用に近い形で、そして働く者の意識もまず就社と、そして企業の中に入って、企業の中の内部労働市場では非常に柔軟で、転勤だとかたくさんあるけれども、まあ定年まで、終身雇用とまでは言えるかどうか分かりませんけれども、やっぱりそういうことの中で、企業の中でということがずっと多く、そういう労働市場、あるいは雇用慣行、あるいはそういうことに支えられた日本のやっぱり労働政策だったんではないかと。

 しかし、それがもう急激に変わってきて、この五%が大体、実質的には、一部で言えば実態は二けたに近い実は失業率ではないかと言われていることもあります。ジョブレスリカバリーかもしれません、この景気回復は。そういう意味からすると、やっぱり日本のその雇用のそういう構造が変わってきたということからすると、それに対する雇用政策というのも、従来型のそういうもので、しかも何かあったらパッチワーク型で、その都度その都度やってきたということから、本気で、何といいますか、腰を据えた、やっぱり一本筋の通った雇用政策が必要ではないかと。そういう意味で、その両面から統一的な構造政策といいますか、そういうものが必要ではないかという言い方をしておるつもりでございます。
 以上です。

山根隆治君  ありがとうございます。