山根隆治君
 私は、ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律案及び預金保険法の一部を改正する法律案の審議につき中間報告を求めることの動議に対し、民主党・新緑風会を代表して、満腔の怒りをもって反対の討論を行うものであります。

 今、私は、議会制民主主義の形骸化の岐路に立たされているような危機感を持ってこの演壇に立っております。そして、私は、議場の与野党を超えた良識ある議員の皆様にお訴えをしたいのであります。

 国会法第五十六条三には、委員会の審理中の案件について特に必要があるときは、中間報告を求めることができると記されております。しかし、この条項が安易に用いられることが許されないのは、議会制民主主義を守る立場からは当然の前提であるはずであります。
 さらに、特に必要があるときという意味は、どのように理解したらよいのでありましょうか。特に必要があるときとは、与党の御都合があるときと解釈すべきなのでありましょうか。特に必要があるときとは、業界からの強い要請があったときと解釈すべきなのでありましょうか。特に必要あるときとは、選挙対策上どうしても必要なときと解釈すべきなのでありましょうか。

 昭和三十八年七月五日、第四十三回国会において、当時、与野党五会派による次のような申合せ事項が確認されているのであります。

 参議院の各会派は、議院の正常な運営を図るため、少数意見の尊重と議員の審議権確保に留意するとともに、議院の品位と秩序の保持に互いに協力することとし、次のとおり申し合わせる。一つ、議案の中間報告は、審査につき委員会中心主義を採用している今国会法の趣旨にかんがみ、みだりに行わないものとすること。二つ、中間報告に関連し、本会議の運営が混乱した実情にかんがみ、このような中間報告は行わないように努力するとされているのであります。

 果たして、今議会における今の中間報告を求める動議は、私が読み上げた申合せに照らして、かなったものでありましょうか。答えは明らかに否であります。

 この金融関連二法案の審議は、衆議院におきまして、本会議では三月十一日、民主党十五分、公明党十五分が趣旨説明に対する質疑を行い、その後、三月三十一日に趣旨説明を委員会において聴取をいたしたのであります。そして、四月九日、第一回の質疑を行い、四月十三日に第二回の質疑を行い、四月十四日には第三回目の質疑を行った後、四月十六日には地方公聴会を行っているのであります。そしてさらに、衆議院におきましては、四月二十日、地方公聴会を意見陳述六人を数えております。さらには、同日、参考人の意見陳述として五人の方からそれぞれの意見を聴いているところであります。翌日二十一日には、質疑を四回目のものを行いました。この質疑には総理も出席しての論議が行われたわけであります。そして、いよいよ四月二十三日、委員会における討論が行われた。

 そうした手順を踏まえ、委員会質疑を八日間行ったということであります。合計をいたしますと、対政府の質疑は十七時間三十分に及んでいるところでございます。さらに、参考人を含む意見陳述、地方公聴会を数えると、二十二時間十五分を費やしているのであります。

 一方、我が院における、参議院における金融二法の審査状況でありますけれども、本会議において趣旨説明が行われ、その質疑が五月の二十八日、民主党十五分、共産党十分を費やして行われたわけでありますが、その後六月一日、委員会におきまして趣旨説明の聴取を竹中大臣から五分間行われたわけであります。委員会の質疑といたしましては、六月三日、質疑第一回が行われ、六月の十日、質疑が二回目が行われたわけでありますけれども、委員会はまだ二日の質疑でありますし、その質疑時間というのは三時間五十六分にしかすぎないわけであります。また、地方公聴会も開かれることはこの間ございませんでした。

 乱暴な法案内容はもちろんのこと、委員会の審議状況でさえこのような有様であるので、私は憤りを禁じ得ないものであります。

 さきに私は、与野党を超え、議員各位の良識にお訴えすると申し述べたのは、今、参議院の良識、議会制民主主義が問われていると思うからであります。自民党、公明党、与党の皆さん、今こそ党の利害を超え、立ち上がってください。議員としてのぎりぎりの価値基準は、党利党略を超え、あくまでも国民の利益であり、幸いであるはずであります。一政治家として御自分の良心に従ってこの動議に反対の立場を私たち民主党の議員とともに明らかにしていただきたいと思います。議会制度を守るに政治生命を賭していただきたいと思います。今、我々は我が国における真の議会制度の崩壊に立ち会おうとしているのであります。良心を是非示していただきたいと思います。

 私はあなたの意見には反対である、しかしあなたの自由な言論を守るためには私は命を懸けると言ったと伝えられるフランスの啓蒙主義を代表する多才な哲学者であり作家であったボルテールの名言を思い起こしていただきたいと思うのであります。議会に分かりやすく美しい形式は不可欠であり、本参議院は議会運営委員会で形を整え、激しい議論の中にも一定の秩序を保ちながら議会運営をそれなりに果たしてきたのであります。しかし、小泉内閣となってからは、さきの国民年金法などの採決に当たって、委員会そして本会議においてもルール無視、ルール違反が常態化してきているのであります。数こそがすべてという与党、自民党、公明党の姿勢に、国民は自由と民主主義に危機感を募らせてきております。そして、小泉内閣の目くらましのパフォーマンスにも嫌悪感を抱き始めているのであります。そのことは、年金法案採決後の世論調査に昨今如実に表れているところであり、小泉内閣の僥幸、幸運も尽き、終えんを迎えつつあることが明らかになってきているのであります。

 本年は、国会開設とともに議員に選ばれて以来議席にあること六十三年、世界議会史上の記録を打ち立てた憲政の神様尾崎行雄没後五十年であります。国会議事堂中央塔の下には、今日の議会政治の在り方を尾崎先生が厳しくごらんになられているに違いありません。
 世界の議会制度に比べて、まだまだ我が国の議会制度の歴史は浅いと言われております。イギリスは一六八九年に近代の議会制度が始まりました。アメリカは一七八七年であります。フランスは一七八九年、そしてドイツは一八四八年であります。

 我が国の議会制度は、日本帝国議会第一回、一八九〇年以来の歴史でございますが、もうそろそろ我が国に真の議会制度を確立するためにも、議員各位に委員会審議の中間報告を求めるという本動議に反対されることを強く求めまして、私の反対討論といたします。(拍手)